2020年11月9日月曜日

2020年11月の竜舞亭第一例会の話:Return of the Runelords #05

 

Paizoという会社はTRPG界隈では珍しく盛況かつ自前ショップ持ちという比較的強い企業と言えるのでフットワーク軽く様々な展開を手広く拡げている。しかしPathfinder RPGは英語出版物であるという性質上日本国内での展開はどうしてもやる気のある個人に依存しがちになり、よしんば企業から翻訳出版されたとしても継続は担当者のモチベーション、それ以上に売り上げ次第とになる。だからこそ関連物の購入、所謂”買い支え”は情けは人の為ならぬ遊び続ける自身の未来への投資とも言える。

 現状で私が完走を願ってならないのはReturn of the Runelords関連で言えばComic版Pathfinderで、合本5巻目に当たるHollow MountainはReturn of the Runelords前夜とも言える話であり、比較的イメージイラストが豊富なAdventure Pathでも描かれていない部分がフルカラーのコミックとして描かれている。
因みにKADOKAWAによる現在の刊行数は2巻で部数ももう少し欲しいし何より先は長い…”ファンタジー冒険者のアメコミ”という点に於いて間違いなく面白いので興味があれば是非に。

今回の面子は以下の通り。前回から1レベル上昇しキャラクター達は6レベルとなった。

プレイヤー名前種族クラス
makkouレーナ人間ミーディアム(遺物交信者)
順調にパーティーの切り込み隊長となりつつある二刀流カタナ使い。特徴は〔伝説の末裔〕。
ちーミェンウェン人間アンチェインドモンク
上級クラスBrother of the Sealを獲得。特徴は〔霊との接触〕。
Waiz鈴雨フェッチリングスカルド(Urban Skald)
パーティーのサブ知識と交渉担当。特徴は〔失われた時間〕。
トリグラフリヴィア人間オラクル(魂の導き役)
唯一の信仰系にしてサーシロンマニア。特徴は〔サーシロンへの誘惑〕。
Clare
ニャルアーケイニスト(Aeromancer)
直列の敵を求める秘術使い。特徴は〔オードラニの味方〕。
2xxPテオドラ人間サイキック(Magaambyan telepath)
要所での呪文の使い方が光る。特徴は〔不慮のクローン〕。

尚、以下はPathfinder Adventure Path #134『It Came from Hollow Mountain』序盤に関するネタバレを含みます。また、シナリオは随所変更されています。 

1.深夜の訪問者

翌日からの船旅に備えてグリフィン亭で休んでいた一行は深夜に敵の襲撃を受ける。暗殺者は音も無く窓を開け寝室へ忍び込むとまずポイズン・サンド・チューブを使ってテオドラにサソーヌの葉の残滓を吹き付け、次いでブルー・フィニスを塗ったシュリケンを取り出して部屋に居た睡眠中のリヴィアを始末しようとした。しかし運良く目覚めたテオドラにオーナイリク・ホラーで足留めをされ、リヴィアのショッキング・グラスプがクリティカルで入った上にミェンウェンが珍しく非致傷朦朧化打撃をクリティカルで叩き込んだ為にその場で気絶した。

 縛った上で目覚めさせたものの、このディチ=カ(Dith-Ka)という名のバグベア・ニンジャは自ら舌を切り落としていた為に尋問することは出来ず、またこれ以上の抵抗は不可能だと悟ると奥歯に仕込んであった毒を飲み自害した。彼の持っていたメモはシークレット・ページによって暗号化されていたがニャルがこれを解呪して解読するとそこには優美なヴァリシア語でシェードロン評議会の重鎮達の名前に加えて一行の名前が書いてあり、これは暗殺対象のリストだった。またメモには任務達成の暁には”見捨てられし中階層(Forsaken Mezzanine)”にて報酬を渡すとあり、これはホロウ・マウンテンのとある階層の名前であると判明した。

 因みにディチ=カはリノーム王国首都カルスガルドで暗躍していたニンジャ軍団”凍闇忍軍(Frozen Shadow Clan)”の生き残りだが、彼らとの対峙とその顛末は過去のAdventure Path:Jade Regentにて語られている。

 翌朝、昨夜の顛末をシェイラ・ヘルドマーチに報告すると、シェイラの方からも一行に言伝と客人があると返される。早朝に彼女の家にコルラと名乗るハーフリングの女性が現れ、焦った様子で”新たなる英雄達”へ大至急伝えなければならない事があると言ってきたのだ。コルラとその主人ヴィラレーンは一行と別れてから新たな人生を歩むべくすぐさま自由を取り戻し、宿を取り眠っていたのだが夜明け前にヴィラレーンは忽然と姿を消し、後には青緑色に輝く塵のようなものが残されていた。ニャルはこれが”孔雀の精霊教団”の儀式魔法である”孔雀の避難(Viridian Escape)”によるものだと気付いた。またその晩にヴィラレーンはコルラにこれから教団の裏切り者である自分を追い掛けてくるであろう”見捨てられし中階層”で待つヒラ・ドスという”孔雀の精霊教団”の女司祭の話をしており、何らかの手がかりになるのではないかとそれも打ち明けた。

 現時点でのあらゆる物事の焦点がホロウ・マウンテンへと集まっており、一行はコルラにヴィラレーンの救出を約束すると”ティアリーの気紛れ”号へと乗り込んだ。


2.女主人の睥睨
港でリヴンレーキ島(Rivenrake Island)についての情報を聞くと、既にロング・シップのフリジャヤ(Frijaya)と商船”ローディムの競走艇(Lordim Racer)”の2隻の乗客が島へと向かっており、前者からはリノーム王国の首都カルスガルドへと向かう途中で身なりの良い洒落者の集団が魔法のボートで途中下船したという話を聞くことが出来た。後者には凶悪な外見のごろつき達は一行と同じく”古老の船着き場(Old Man's Launch)”から島へと乗り込もうとしたが、乗客達は上陸艇が島に着いた時に口論となり6人の乗客達が船員を殺してしまった。その後、残った船員達は島に近付くのを恐れた為に船長は彼らを見捨てざるを得なかったのである。
 ”ティアリーの気紛れ”号での船旅は何事も無く進み、やがて湾の最も高い山であるリヴンレーキ島の独特の外観が一行の前に姿を現した。巨大橋イレスパンの最北端にあるホロウ・マウンテンの山頂付近に巨大な女性、ルーンロード・アラズニストの憤怒の表情が刻まれており、一挙手一投足を見逃さんとばかりに一行を睨み付けているかのように見えた。
 ”古老の船着き場”は狭い砂浜で、噂に聞いた通り先客の小船が放置されており中には人間の腐乱死体が2体転がっていた。いずれの死体も損壊が酷かったが恐怖に目と口を見開き更には喉が切り裂かれていた。死体からはそれ以上の情報は引き出せそうになかった為、一行は穴を掘り彼らを埋葬すると事前にコリアに指示された通り近くにあった焚き火の跡に火を点け狼煙を上げる。そして少し待つと遙か先の森の中からケルフッドのものであろう返答の鏑矢が甲高い音を立てて打ち上げられた。
 挨拶を済ませた一行が川を越える丸木橋を渡ろうとすると、その裏に隠れていた大型昆虫を思わせる異形ブライトスポーンが襲いかかって来た。飛行能力を持つ上に停滞のオーラを放つクリーチャーと不安定な足場で戦うという圧倒的に不利な戦闘になるかと思われたが、テオドラがカーム・エモーションズの呪文で敵の戦意を削ぎ、急ぎ通り抜けることに成功した。


3.二人のケルフッド
一行が奇妙に既視感のある森の中を進み続けると、やがて薄い生け垣の向こうから男性の声でゆっくりと此方に入ってくるよう指示される。通り抜けた先は夢の中でソーシェンと出会った場所そっくりの広場となっており、野営地では中央にある大きな木にもたれ掛かる男性が一行へと親しげに手を振っていた。しかしその声は裏腹に警戒と緊張に満ちたもので、手に何も持たない男は口を開かずに一行の心臓へと矢を向けていると警告し、鈴雨が敵意を持たないことを説得で示すと樹上から下にいるのと瓜二つの男が降りてきた。彼らはどちらも私、或いはケルフッドであると名乗った。

 彼はかつてパスファインダー協会によるホロウ・マウンテンの探索中に絶体絶命の危機から逃れる為に壊れたポータルを利用したことによって存在を分割されたが、どちらも”私”であり2人の私達ではないと語ってくれた。テオドラが自分もルーンロードの遺産に手を出したことでトラブルに巻き込まれた身の上を話すとケルフッドは打ち解け、知っている限りの島の情報を共有してくれた。分割されたケルフッドは島から離れると消滅してしまう為、仲間達と別れてこの島を偵察する任務に就いたこと、”憤怒の鍛冶場(The Forges of Wrath)”はアラズニストの軍事物資貯蔵庫である”悪意ある武具庫(Baleful Repository)”の副階層ではないかと指摘し、入り口である放棄された武器庫”血石の縦穴(Bloodstone Bunker)”へと向かった「背中に触手を持つ突然変異の怪物」が率いる6人の野蛮な集団が其方へと向かったこと、また彼らこそが”古老の船着き場”で船員達を惨殺した犯人であることを教えてくれた。

 また、ケルフッドが知らない場所から島に上陸した奇妙な3人組、シミターを佩いた色男、ルツェルンハンマーを背負ったドレス姿のハーフエルフの女性、そしてくたびれてはいるがオペラシアターから飛び出して来たかのような派手な赤いドレスを着た赤髪の女性が魚人の旧い神社で野営し、ホロウ・マウンテンへと入っていくのを見たと語った。一行が最後の人物がヴィラレーンに間違いないと追求したが、ケルフッドは彼女は拘束されたり強要されたりせず自分の意志で従っているように見えたと感想を述べた。


4.塵は塵に
一行は森の奥にあるヴィラレーン達が向かったという黄色い岩で出来た神殿へと辿り着いた。神殿の外側にはつい最近まで誰かが野営をしていた形跡が残されており、扉の壊れた神殿の内部はウナギを思わせる下半身を持つマーフォーク、かつてエイローデンに殺された悪魔イブドゥレンギアン(Ibdurengian)の風化した壁画が描かれていた。床はアラズニストの前のルーンロードであるサイビドゥス(Thybidos)の証である六頭ヒドラのモザイク画で飾られており、部屋の中央には祭壇が置かれその表面から絶えず染み出し続ける粘液で分厚く覆われていた。

 床で途切れた足跡からミェンウェンが隠し扉を発見して先へと進むと悪魔イブドゥルレンギアンの残骸であるロイリング・オイルが一行へと襲いかかって来たが、ニャルのイアピアッシング・スクリームで幻惑化した後ミェンとレーナの全力攻撃で速やかに排除された。
 そして発見した下り階段の先は”見捨てられし中階層”、かつては都市シン-バクラカンの行政執行機関であり巨大な図書館だった場所だが、現在では保存の魔法が掛けられていなかった書類は全て朽ち果て塵と化していた。通路の中央には太い柱が、壁には空の本棚が立ち並ぶ回廊の床には色褪せた黄色いモザイクタイルで太陽を描かれ、その上に厚く積もった埃には奥へと続く3人分の真新しい足跡が残されていた。しかしそれを追い掛けようと通路の半ば迄進むとかつての官僚達の成れの果てであるストラングルド・チョーキング・シェードが柱の中から飛び出して来た。以前の戦闘で危険性を知っていた為に並んだところにニャルのライトニング・ボルトが放たれ、リヴィアがキュア呪文を接触で叩き込み、レーナとミェンウェンの攻撃で撃退された。足跡とは逆方向の書見室にはかつてはこの場所の職員だったと思わしき格好の3人の死体があり、いずれの手にも首に巻かれた革紐が残されていた。彼らは信じ難い終焉を見ることを潔しとせず、自ら命を絶ったのである。一行は彼らの手から革紐を外すと、簡単な祈りを捧げて供養の代わりとして先を急いだ。

 次の部屋には床に大きな憤怒のサーシロン・ルーンが描かれ、中央にある机にはクロックワーク・サーヴァントが受付席に座っていた。精巧で複雑な機構を持つ機械は司書らしき機能を持つものらしくリヴィアが興味津々に調べていたがまずはヴィラレーン達を追い掛けようという事になり調査は後回しになった。

 足跡を追い掛け向かった先の部屋は前と左右に扉のある小さな部屋となっており、床には青銅製の板や鉄の歯車散乱していた。その中から赤い布をミェンウェンが拾い上げると、ヴィラレーンの衣装の切れ端に間違いなかった。左側、東へと続く足跡を辿り扉を開くとそこには窮屈そうな男物の鎧を着た女性が机の上に足を投げ出しながら読書をしていた。女性は一行に気が付くと素早く立ち上がり更に奥へと続く扉を素早くノックして警告を発し、自身もレイピアを抜いて斬りかかってきたが、レーナの反撃により気絶した。彼女、いや彼はダミル・ルッソ(Damil Russo)という名前の剣士であり、此処に来る道中で奇妙なポータルに不用意に触れたことにより性別が変化してしまったのだった。
 奥の部屋では孔雀の意匠を取り入れた派手な衣装の女性がヴィラレーンと共に一行を待ち構えており攻撃を仕掛けて来たがミェンウェンがヴィラレーンの目に心術の痕跡を見出し、呼びかけたことで魅了呪文が解除され、残された派手な衣装の女性も旗色が悪くなったところをテオドラのマジック・ミサイルとニャルのイアピアッシング・スクリームで逃走を阻止されてレーナの一撃で絶命した。

 正気を取り戻したヴィラレーンは、絶命した孔雀の精霊の司祭ヒラ・ドス(Hira Doss)が自分に語った内容を覚えておりそれによるとヒラ・ドスはここでアラズニストに対抗する為の手段としてこの先の階層にある”怒りの試練(The Gauntlet of Fury)”を行い、先代の憤怒のルーンロードであるサイビドゥス(Thybidos)の力を借りようとしていたとのことだった。また、かつて自分とヒラ・ドスが”深緑の退避(Viridian Escape)”と呼ばれる転送の儀式を受ける為に出会った鮮やかな青い縞模様の髪を持つ女性が居たが、ヒラ・ドスは彼女を「高貴なるお方(Your Eminence)」と呼んでおり、彼女こそは孔雀の精霊の大司祭ではないかと推測していた。

 彼女から”怒りの試練”へと進む階段の前にはポルターガイストや霊障が居たと聞き、一旦後回しにすることになった。


5.憤怒の鍛冶場
一行がモズマーが使用していたポータルを探す為に”憤怒の鍛冶場(The Forges of Wrath)”の入り口がある奇妙な建物へと向かう途中、森の奥から木の燃える臭いや剣戟の音と奇声が聞こえてきた。一行が警戒しながら近付くとそこには焚き火の周囲で奇声を上げながら長剣を振り回し互いを傷付け合う男達の姿があった。彼らは胸にヤマソスの邪印を下げており一行の姿を認めるとそのまま襲いかかって来た。とはいえバーバリアンの集団に遅れを取ることなどなくニャルがファイアーボールワンドを叩き込んだ後レーナが次々と狂信者達を切り捨て、残った敵もテオドラのマジック・ミサイルで一掃された。

 建物は小川を挟んで建てられた二つのドームの間を繋げた構造になっており、所々で赤い帯や縞が暗褐色の石材の表面に浮き上がりさながら血を流しているようだった。カルト信者達は何とかして入り込もうとしたのか北側の壁にある円柱には傷付け削り取られた痕跡が残されていた。柱に手を置き、信者の1人が持っていたメモに書かれた「アラズニストの栄光の為に開かれん(Open for the glory of Alaznist)」をサーシロン語で唱えると柱が回転しながら地面へと沈み込み入り口が現れた。狂信者達はバーバリアンなのでサーシロン語を話せずこの装置を起動させる事が出来なかったのである。
 建物内部の壁や天井には複数の腕を持つ蟹に似た怪物達が大量の人間を貪り喰らう様と中空に浮かぶ触手の生えた太陽が極めて精巧なフレスコ画で描かれており、これはゴンゴリナン・クリフォトとヤマソス神であることに一行は気付いた。部屋の中央には大穴が空き、縁に置かれた石塊にはロープが結び付けられ穴の中へと垂らされていた。大穴を後回しにして先へと進んだ一行だったが、次の部屋へと踏み込んだ直後アビスの屍肉漁りグリムスレークが召喚され襲い掛かってきたがテオドラのオーナイリク・ホラーで惑わされた後リヴィアのショッキング・グラスプを叩き込まれレーナに止めを刺され消滅した。

 奥の部屋は磨かれた大理石が多彩な青色を放つ部屋だったが、あらゆる場所に残された古い血の痕跡がそれらを台無しにしていた。壁には磨り減っているものの裸の人物が自らの喉を切り裂き恍惚の笑みを浮かべる浅浮き彫りが施されており、壁沿いには錆びた手足枷が吊り下げ並べられていた。中央の壁には朽ちた骸骨が吊されており、その脇腹には鋭い刃を輝かせるファルカタが突き立てられていた。ニャルがこれが呪われたファルカタであることを看破した為、そのまま放置されることとなった。

 テオドラがフェザー・フォールを使い縦穴を100フィート程落下すると、巨大な鍛造炉が立ち並ぶ鍛冶場へと到着した。炉の前の床には爆風のような炎が床を焦がした痕跡が残されていたがいずれの炉にも火は無く冷え切っており、炉の前には石炭が積み上げられていた。先へと進む門の前には上で見たヤマソス信者と同じ格好をした死体が転がっており、酷く焼け焦げていた。詳しく調べようと一行が近付くと突如石炭の山の中から炎が上がり、燃え盛る死体コンバスティッド3体が這い出て襲いかかって来た。不意討ちに反応したレーナが1体を仕留め、返す刀が浅く切り裂いたところをリヴィアがキュア呪文を叩き付けて成仏させ、残り1体はミェンの突撃とテオドラのマジック・ミサイルで仕留められた。

 といったところで今回はここで中断となり。”憤怒の鍛冶場”の本格的な探索、先行するヤマソス信者達との遭遇やソーシェンが言っていた先代の憤怒のルーンロード・ザイビドゥスとの邂逅は次回への持ち越しとなった。

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