2020年8月24日月曜日

2020年08月の竜舞亭第一例会の話:Return of the Runelords #02

Return of the Runelords第2回。このAdventure Pathを翻訳していて実感するのは積み重ねられた歴史というのは代替し難い貴重なものであるということである。様々異論はあると思うが十分に遊ぶに足りる(それこそかつてのD&Dで言えば”赤い手”に匹敵する)6連作シナリオを毎月欠かすことなく130冊以上出し続けたPaizoだからこその重厚さや枝葉の豊かさがあり、それが公式であるからこそプレイグループ間での情報交換や議論の対象となり得る。シナリオに全く関係無い余談が長々と語られることもあれば、端書きのような数行が重大な情報となることもある。これらの翻訳を進め情報を余すことなく読み解くことはGMの特権であり、これこそが私がPathfinder RPGのGMを最高に楽しいと思える瞬間である。

 尚、今回の参加者の面々は以下の通り。前回から1レベル上昇しキャラクター達は3レベルとなった。

プレイヤー名前種族クラス
makkouレーナ人間ミーディアム(遺物交信者)
首に執拗にこだわる謎のサムライ霊に憑依された二刀流カタナ使い。特徴は〔伝説の末裔〕。
ちーミェンウェン人間アンチェインドモンク
ケル・マーガの”封印修道会(Brothers of the Seal)”出身で腕に兄弟子の霊を宿す。特徴は〔霊との接触〕。
Waiz鈴雨フェッチリングスカルド(Urban Skald)
ミンカイ人の翁に育てられた捻くれ者。特徴は〔失われた時間〕。
トリグラフリヴィア人間オラクル(魂の導き役)
長柄武器を使いこなすオラクル。特徴は〔サーシロンへの誘惑〕。
Clareニャルアーケイニスト(Aeromancer)
癖のある標準語を喋り大気の技を操る秘術使い。特徴は〔オードラニの味方〕。
2xxPテオドラ人間サイキック(Magaambyan telepath)
元男性の大自然系サイキック。特徴は〔不慮のクローン〕。
尚、以下はPathfinder Adventure Path #133『Secrets of Roderic’s Cove』中盤に関するネタバレを含みます。また、シナリオは随所変更されています。


1.チャバリ川を越えて
ロデリック卿の幽霊より現在この町に騒乱をもたらしている魔剣バラケットの封印を依頼された一行は、卿の地図に示された宝物庫(the Vault)を捜索するため、また以前にラレンザ港湾知事から依頼されていた行方不明となっているドワーフ達の捜索も兼ねてチュールウッド(Churlwood)へと向かうこととなった。

 ロデリック・コーヴとはチャバリ川を挟んで対岸に位置するチュールウッドへと渡る手段を探していると、キナエの友人で以前に知り合った森に詳しいと自称する自由人コルトン・ハーリスモア・ラブキン(Kolton Harrismore Lovekin)から渡し守の老婆ハレン・ロスカー(Hallen Rosker)を紹介される。ハレンは年寄りとなり足こそ不自由になったものの農作業で鍛えた衰え知らずの膂力は健在で、川に渡されたロープを使い腕の力だけで7人が乗った浮き艀を向こう岸へと難なく渡してくれた。お喋り好きな彼女は一行が町の騒動を治める為に働いていると聞くと感心して渡し銭を取らずに船を出してくれた。

 だが、向こう岸に立つ人影を見るとハレンは短い侮蔑の呟きと共に警告を発した。そこにはチュールウッドを拠点とする野盗集団である”路の守り手達(The Roadkeepers)”の幹部、ララバイ・ヴァンキャスカーキン(Lullaby Vancaskerkin)が4名の手下達を率いて新顔のカモから”通行税(highway taxation)”を取り立てるべく薄笑いを浮かべて待ち構えていた。

 ララバイは一行を見るなりにこやかな笑みと大きく広げた手でさながら旧来の友人のように迎え入れ、早口で危険な森の安全を保つことの重要性と労力を説いた。ハレンは小声で彼女は悪辣な取り立て屋ではあるが、金さえ払えば大きな問題は起こらないと助言してくれたものの、要求された臨時寄付の提示額は一人頭10gpと平素の取り立ての20倍もの金額だった。そもそも一行側には交渉の余地は最初から無く、支払いを拒否したことで今度は口調が脅迫のそれになったこともありすぐさま交渉は決裂し戦闘となった。
 しかし、ララバイを除けば他の山賊達は一行にとって苦労する敵ではなく素早くテオドラが前に出て必殺のカラー・スプレーが炸裂し山賊達は戦闘不能に陥り、残された山賊達もニャルとリヴィアが呪文で蹴散らし、ララバイはミェンウェンの朦朧化打撃には耐えたもののレーナの連撃の前に沈み戦闘は終了した。このレベル帯でのカラー・スプレーの効きさえすれば戦場の趨勢を決められるので秘術使いの覚悟の決まり具合が結果として味方の損害を減らせるとも言える。捕らわれたララバイは一行の尋問に素直に情報を吐いたがドワーフについては自分達ではなくゴブリン達の方だろうと示し、また町の衛兵については死体の置いてある場所を教え、行けば分かるとだけ答えた。その後ララバイはハレンに引き渡され、一行は先へと進むこととなった。

 因みにヴァンキャスカーキン家はヴァリシアでも有数の犯罪組織であり、一族の面々とは過去の幾つかのAdventure Pathで遭遇することになる。また、Rise of the Runelordsにも登場する女運の無さに定評がある戦士Orikもその血縁である。ララバイも(過去のプレイヤー達によって)崩壊した犯罪帝国を再興し自らが後継者となるために大金を必要としていたが結果はこの通りとなった。



2.”旅人の復讐”
ララバイに教えられた広場は何処か執拗さが感じられる程に手入れが行き届いており、下生えが育たぬように砂利さえ敷き詰められてさながら整地された環状交差点のようだった。広場の中央には樫の古木が立ち、その枝には銀色の護符のようなものが掲げられ根元には鎧を着た3体の死体、町の衛兵のものが転がっていた。一行が死体へと近付くと、突如根元からアンデッドが飛び出してきた。”路の守り手達”はそれ、道無き場所を徘徊するトレイルゴーントを”旅人の復讐(The vindictive traveler)”と呼びこの広場に封印していたのである。

 自身の下僕を増やそうと襲いかかってきたトレイルゴーントだったが整備された道を横切ることが出来ない為に一向に接近することは出来ず、しかしそれでも苦痛を伴う呻き声は生ける者を怯えさせるには十分であり、また近付かなければ衛兵の死体回収も出来ない為にテオドラの能力でアンデッド有効化されたコマンド呪文によって伏せ状態にされミェンとレーナのクリティカル・ヒットで撃退され不幸な復讐者の長く続いた旅は終焉を迎えた。レーナのサイコメトリーによって”路の守り手達”によってこの広場へと追い立てられ背後からトレイルゴーントにより殺されたという衛兵達の最期を知るがトレイルゴーントにより殺された生物は日没を過ぎるとまたトレイルゴーントとなってしまう為、死体は町の衛兵達に引き取って貰うべくハレンに預けられた。

 ララバイは行方不明のドワーフ達については何も知らないと答えていた為、一行は犯人と思わしきゴブリンの住処へと向かうかそれともロデリック卿の地図にある石造りの家へと向かうかを選ぶことになったが、人命優先でゴブリン達の討伐へと向かうことになった。


3.”茨唇族”
ゴブリン”茨唇族(Bramblemouth clan goblins)”の住処は森の中央にある低い尾根の西側に面しており、常に薄暗く入り口も蔦に覆われていたが洞窟からはゴブリン特有の悪臭と黒い煙が常に立ち上っていた為に容易に発見することが出来た。
 ゴブリンの見張り達は洞窟の入り口に生い茂るブラックベリーの茂みに隠れるように待ち構えていたが、片方は発見されレーナのカタナの錆となり、もう一体は隠れて必殺の一撃を狙ったものの外れ、ミェンの拳の染みとなった。
 洞窟の内部はゴブリン達の身長に合わせた高さしかなく、しかも積み上げられた瓦礫によって通路が仕切られており無理矢理入り込む移動を余儀なくされた。奥へと進もうとすると細い通路で伸びきった隊列で進むことを余儀なくされた一行に隠れていたゴブリン達が瓦礫の壁を越えて次々と襲いかかってきた。こちらは武器が振るい難く、小型生物に有利な狭さといった少し前によく見た初級冒険者がゴブリンに一方的に嬲られる状況(もっとも、ゴラリオンのゴブリンは他種族を生殖に使わないので食糧になるのがオチだが)に陥り隊列の間に割り込まれたリヴィアが大きなダメージを受けるなど危機的な状況にも見えたが、テオドラが的確な判断で前に出てカラー・スプレーを叩き込み、奥の巣から襲いかかろうとしていたゴブリン・ドッグ数匹もろとも戦闘不能に追い込んだ。

 そこに洞窟の奥に潜んでいたゴブリンの狩人”夜目(Nighteye)”によるの狙い澄ました矢の一撃が放たれ前に出ていたミェンウェンに突き刺さる。だが、居場所が知れると人狩りの特性から共通語が理解出来たことが仇となりテオドラのコマンド呪文で呼び寄せられ、レーナによって切り捨てられた。

 狭い通路を抜け、未だ火の絶えないかまどのある大部屋を越えるとその先は天井の高い洞窟へと繋がっていた。またもや瓦礫の迷路に潜むゴブリン達を蹴散らしたりゴブリンが瓦礫の下に生き埋めになったりしながら先へと進むと人工的な壁のある大きな部屋へと辿り着いた。そこで先ほどの騒ぎが聞こえたのか暗闇の奥からドワーフと思わしき声が助けを求めて呼びかけられる。しかし、一行が足を踏み出そうとすると側面の暗闇から熱線が放たれ鈴雨に直撃する。
闇の中より姿を現したのは蛇の身体にアイウーン・ストーンがくるくると回るゴブリンの頭部を持つ異形、ゴブリン・スネークのソーサラー”セセスセレッチ(Ssesseleck)”であり、次いで反対側の小部屋からは燃え盛るドッグスライサーを手にした族長チークトゥース(Chief Cheektooth)、更には奥からゴブリンの蛙話者”クランブル”(Clumble, Goblin Frog-Talker)がドワーフの捕虜達を殴り黙らせ登場した。
因みにこの直前には慎重に進まない場合はこの3匹を同時に相手にすることになるという旨の注意が書かれている為、折角なので3体同時に戦って貰うことになった。いずれも強力な術者であり、犬殺しと火の神ザロンジェルの邪印を首に掛けたチークトゥースは彼が最も好み得意とする火球(5d6)を、ウィッチのクランブルは散開した一行に悪態を吐きながら電撃(6d6)を、セセスセレッチは再びスコーチング・レイ(4d6)を放とうと迫ったが、セセスセレッチはテオドラの強化されたイアピアシング・スクリームにより幻惑化した後レーナによって真っ二つに、チークトゥースはミェンウェンの朦朧化打撃からの三連撃によって動くことなく沈み、クランブルはニャルのマジック・ミサイルによって呪文発動を潰され呪術の間合いに近付くことなく倒された…ハロウ・カードの助けがあったとはいえ正直何とかなるとは思わなかった。

 奥には行方不明となっていたドワーフ達が鎖に繋がれており、この坑道の発掘に必要な情報を聞き出す為に拷問されていたらしく酷く衰弱し怯えていたが他に問題はなく、実はついて来ていた(シナリオにも戦闘には参加しないと明言されている)コルトンによって町に送り届けられた。


4.アラズニストの武器庫
更に一行が探索を続けると奇妙な円形の部屋へと出る。中央の床には青白く輝くルーンが円形の魔方陣を描いており、リヴィアのディテクト・マジックに召喚術の反応を示した。試しに円へと踏み込むと次の瞬間別の部屋へと転移し、そこはランサーを手にした女ルーンロード、アラズニストがジャイアント達を従える様子が描かれた壁画のある左右対称の部屋で、しかし中央には不可視の力術の壁、ウォール・オブ・フォースがあるようで先に進むことが出来なかった。部屋の隅には1匹のゴブリンが飢えて怯え縮こまっており、彼女は数日前に偶然この部屋へと転移したものの再度ルーンに触れることを恐れて戻ることが出来ずにいた。このゴブリンは情報の代価として解放され、また時折罅のようなものがちらつく中央のウォール・オブ・フォースはミェンウェンが殴ると簡単に破壊されて消失し、反対側の魔方陣から別の部屋へ辿り着いた(ミェンは後ほど殴り壊せるようになるらしい)。
 部屋から出た通路の先には緩みきった態度で”路の守り手達”の見張りが雑談をしており、盗み聞きをしてみると彼らの幹部の1人であるドワーフのドルランドが先にある金庫室を開けようと躍起になっているもののその試みが全く上手く行っていないことを話していた。忍び寄り「その事について詳しく」と話に割り入るように鈴雨が不意打ちを仕掛けるが、ハンマーを手にしていた見張り達は真っ先に扉に叩き付け警報が発せられ鍵開けを中断したドルランドと警報を聞いて上階から山賊達を引き連れて駆けつけてきた”路の守り手達”の首領マザー・ナイトトラッシュにより逆に挟撃された状態となってしまう。
 血路を開く為にテオドラが上階からの敵をカラー・スプレーで黙らせ、更にニャルがサンダーストンプを使いナイトトラッシュを転倒させレーナがこれに止めを刺した。ドルランドはインヴィジビリティのエキスを飲み背後から強襲を仕掛けようとしたが膠着状態に陥り、間合い武器のダブルチェインド・カマを構え直したミェンウェンによって倒され、ドルランドに付き従っていたギア・ゴーストもいずこかへと消え去り戦闘は終了した。

 ドルランドの懐には”光り輝ける教団”の教祖コルステラ・ロスタラータ(Corstela Rostrata)と思わしき者からの手紙があり、この2人の間に何らかの密約が交わされていたことが理解った。そしてドルランドのように7つのルーンを5カ所に当てはめるという最悪78125通りの暗証番号を順番に試すという最長3ヶ月は掛かる気の遠くなるような作業は必要なく、一行はロデリック卿の地図に書かれていたものを参照して僅か4ラウンドで扉を解錠し、以前に焼却の罠が発動して灰が積もる玄室に納められていた緑色の透明な水晶、スカイメタルのノクワール製の籠手の表面に隙間無くルーンが刻まれたアーティファクト、ルーンワーデッド・ガントレッツを発見し回収した。

 此処で時間となり今回は終了。一行の活躍によりチュールウッドを暴力で支配していた2つの集団が壊滅し、束の間ではあるがロデリック・コーヴの外側には平和が取り戻された。

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